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※本記事は一般的な情報の整理であり、診断や治療の指示ではありません。痛みが続く場合は整形外科を受診してください。
ラウンドや練習のあとに肘が痛む。これをゴルフ肘と呼ぶことがあります。ただ、この言葉は曖昧に使われており、内側が痛むのか外側が痛むのかで別の状態を指します。
どちらなのかが分からないまま対処すると、必要な休みを取らずに続けてしまうことになります。本記事では、医療機関が示している情報をもとに、2つの違いと対処の考え方を整理します。
ゴルフ肘とテニス肘は別のもの
まず押さえるべき点はここです。慶應義塾大学病院の解説によれば、ゴルフ肘とテニス肘は痛む場所が違う、別の状態です。
| 呼び名 | 正式な病名 | 痛む場所 |
|---|---|---|
| ゴルフ肘 | 上腕骨内側上顆炎 | 肘の内側(小指側) |
| テニス肘 | 上腕骨外側上顆炎 | 肘の外側(親指側) |
ゴルフ肘は肘の内側、小指側から前腕にかけて痛みが出ます。テニス肘はその反対で、肘の外側、親指側に出ます。
名前に競技名が付いているため混同されますが、どちらの名前も通称です。正式には上腕骨の内側上顆という部分の炎症か、外側上顆の炎症かという区別になります。
「ゴルフ肘」はゴルフと必ずしも関係ない
ここが重要な点です。同じ解説では、これらの状態は「ゴルフとは必ずしも関係なく」起こるとされています。
外側上顆炎についても同様の指摘があります。日本臨床整形外科学会の解説では、テニスが原因となるのは1割弱とされており、重い物を持ったり、仕事で手を使いすぎたりすることによって起こると説明されています。
つまり、競技名が付いているからといって、その競技をしている人だけの問題ではありません。日常生活や仕事での手の使い方が原因になっていることのほうが多いということです。
この事実は対処の方向を変えます。ゴルフを休めば治るとは限らず、手を使う作業全体を見直す必要があるということになります。
どんな動作で痛むのか
痛みが出やすい動作には共通するものがあります。慶應義塾大学病院の解説では、次のような動作が挙げられています。
- 肘を伸ばした状態で物を持ち上げる
- タオルを絞る
テニス肘ではこれに加えて、ドアのノブをひねる動作でも痛みが誘発されるとされています。
日本整形外科学会の説明では、外側上顆炎について物をつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作で、肘の外側から前腕にかけて痛みが出るとされ、多くの場合、安静時の痛みはないと示されています。
内側(ゴルフ肘)については、手首を握る、物を持ち上げる、手を回すといった動作で痛みが増すとされています。
安静時に痛まないという点は、見落としにつながりやすいところです。座っているときは何も感じないため、「大したことはない」と判断して使い続けてしまいます。

ゴルフのどこで負担がかかるか
ゴルフが直接の原因とは限らないとはいえ、負担がかかる場面はあります。
ダフリです。ボールの手前を叩くと、地面からの衝撃が手首と肘に返ります。1回なら問題にならなくても、練習場で繰り返せば蓄積します。マットの上では特に跳ね返りが強くなります。
握りの強さも関係します。クラブを強く握り込んだままスイングすると、前腕の筋肉が常に緊張した状態になります。この筋肉が肘に付着しているため、負担はそのまま肘に行きます。握る力の適切な目安はゴルフクラブの握り方|力加減で扱っています。
手首の使い方も影響します。手首を過度に返す動きが入ると、前腕への負荷が増えます。手首の役割についてはゴルフ手首の使い方にまとめています。
打球数も要因になります。1日に何百球も打てば、どれだけ正しいフォームでも腱には負荷がかかります。
医療機関が示す対処の流れ
治療の内容は、医療機関の解説でおおむね共通しています。基本は保存療法です。
日本整形外科学会が外側上顆炎について示している内容を整理すると、次のようになります。
- 手首や指のストレッチをこまめに行う
- スポーツや手をよく使う作業を控える
- 湿布や外用薬を使用する
- 肘に局所麻酔薬とステロイドの注射をする
- 専用のバンドを装着する
- 保存療法が無効な場合は手術療法(筋膜切開術、切除術、前進術、肘関節鏡視下手術など)
慶應義塾大学病院の解説でも、治療法として局所安静、薬物療法、装具療法、理学療法、手術療法が挙げられています。日本臨床整形外科学会の解説では、ステロイドの局所注射が有効とされ、重症時にはギプス療法も考慮されると説明されています。
内側(ゴルフ肘)についても、運動やスポーツを休止して安静にすることが基本で、炎症を抑えるためにステロイドや非ステロイド系の抗炎症薬を使うことがあるとされています。
共通しているのは、まず使うのをやめるという点です。痛み止めを飲んで続けるという対処は、この流れには入っていません。
なぜ安静が最優先になるのか
治療の説明を読んでいて引っかかるのは、「使うのをやめる」が常に先に来るという点です。痛み止めや注射、装具といった手段が並んでいても、その前提として安静が置かれています。
理由は、この状態が腱の付着部に起きている損傷だという点にあります。筋肉の疲れとは性質が違い、骨に腱がくっついている部分で炎症や微小な損傷が繰り返されている状態です。日本整形外科学会の説明では、外側上顆炎は年齢とともに肘の腱がいたんで起こるとされています。
ここが厄介なのは、使いながら治すという経路がないということです。損傷している部分に引っぱりの力をかけ続ければ、治りかけたところがまた壊れます。痛みを抑えて続けると、痛みという信号だけを消して損傷は続くという状態になります。
長引く人が多いのも、この構造によるものです。痛みが引いたからと再開し、また痛くなる。これを繰り返すと、最初に数週間休めば済んだものが数か月に延びていきます。
もうひとつ押さえておきたいのは、代わりに使える部分がないという点です。足を痛めたなら上半身の練習に切り替えるという手がありますが、肘の場合はクラブを握る動作そのものが負荷になります。パットだけに絞るという選択はありますが、それも握力を使います。
つまり、休むしかない時期があるということです。そこを認めて早めに切り替えたほうが、結果的にクラブを握れない期間は短くなります。
装具(エルボーバンド)の位置づけ
保存療法のなかで繰り返し出てくるのが装具です。日本臨床整形外科学会の解説では、エルボーバンドで前腕を締め付けると効果があるとされています。日本整形外科学会でも、専用のバンドの装着が挙げられています。
仕組みは単純です。前腕を締めることで、肘の付着部にかかる引っぱりの力を途中で受け止めます。
ただし装具は治すためのものではなく、負担を減らすためのものです。付けたから打っていいという判断にはなりません。安静が基本であることは変わりません。
肘用のサポーターは、楽天市場で肘サポーターを探すやAmazonで肘サポーターを探すから探せます。種類と締め付け方が製品によって違うため、医療機関で相談してから選ぶほうが確実です。
予防としてできること
痛みが出る前にできることもあります。
- ストレッチを習慣にする:手首と指のストレッチは、治療としても挙げられている
- 握りを強くしすぎない:前腕の緊張を減らす
- 球数を区切る:練習場で続けて打ちすぎない
- マットでのダフリに注意する:跳ね返りが強いため蓄積しやすい
- 手を使う仕事の負荷も見る:原因は競技側だけとは限らない
スイングそのものの基本についてはゴルフスイングの基本で整理しています。インパクトで何が起きているかはゴルフインパクトの瞬間にまとめました。
受診の目安
次のような場合は、自己判断で続けずに整形外科を受診してください。
- 痛みが数週間以上続いている
- 日常の動作(タオルを絞る、物を持ち上げる)で痛む
- 安静にしていても痛みがある
- 握力が落ちてきた、物を落とすようになった
- 市販の湿布で変わらない
診断には、医師が手に抵抗を加えて痛みの出方を確認する方法が用いられます。似た症状でも原因が別のことがあるため、どこが痛むのかを自分で判断せずに診てもらうのが確実です。
ゴルフ肘に関するQ&A
Q. ゴルフ肘とテニス肘はどう違いますか?
A. 痛む場所が違います。ゴルフ肘は肘の内側(小指側)で、正式には上腕骨内側上顆炎です。テニス肘は肘の外側(親指側)で、上腕骨外側上顆炎です。
Q. ゴルフをしていなくてもなりますか?
A. なります。慶應義塾大学病院の解説では「ゴルフとは必ずしも関係なく」起こるとされています。外側上顆炎についても、テニスが原因となるのは1割弱という指摘があります。
Q. どんな動作で痛みますか?
A. 肘を伸ばして物を持ち上げる、タオルを絞るなどの動作です。安静時には痛まないことが多いとされています。
Q. 続けながら治せますか?
A. 治療の基本は安静です。スポーツや手をよく使う作業を控えることが、医療機関の説明では前提になっています。
Q. サポーターは効きますか?
A. エルボーバンドで前腕を締めると効果があるとされています。ただし負担を減らすための装具で、治すためのものではありません。
Q. 手術になることはありますか?
A. 原則は保存療法ですが、効果がない場合に手術療法が行われることがあります。
Q. いつ病院に行くべきですか?
A. 痛みが数週間続く、日常動作で痛む、安静時にも痛む、握力が落ちたといった場合は受診してください。
まとめ
- ゴルフ肘は正式には上腕骨内側上顆炎で、肘の内側(小指側)が痛む
- テニス肘は上腕骨外側上顆炎で、肘の外側(親指側)が痛む。両者は別の状態
- どちらも「ゴルフとは必ずしも関係なく」起こる。外側上顆炎でテニスが原因なのは1割弱
- 物を持ち上げる、タオルを絞るといった動作で痛み、安静時には痛まないことが多い
- ゴルフ側の要因としては、ダフリの衝撃、強い握り、手首の使い方、打球数がある
- 治療の基本は保存療法。まず使うのをやめることが前提になっている
- エルボーバンドは負担を減らす装具で、治すためのものではない
- 痛みが続く、日常動作で痛む、握力が落ちたという場合は整形外科へ
安静時に痛まないという性質があるため、軽く見てしまいやすい状態です。しかし使い続ければ長引きます。
痛みが出た時点で球数を落とし、ストレッチと休養を取る。それで変わらないなら、早めに診てもらう。これが遠回りに見えて最短になります。