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全米プロゴルフ選手権は、男子の4大メジャーのうち2番目に開かれる大会です。英語では PGA Championship と呼ばれ、日本では「全米プロ」と略されることが多いものです。

4つのメジャーのなかでは、やや地味に扱われがちな大会です。しかし仕組みを見ると、他の3つにはない独特な設計が入っています。現場で教えているプロに出場枠が確保されているという点です。本記事では、この大会の成り立ちと特徴を整理します。

全米プロゴルフ選手権とは

第1回は1916年10月、シワノイ・カントリークラブで開かれました。4大メジャーのなかでは最も新しい大会ですが、それでも100年を超える歴史があります。

主催しているのはPGA・オブ・アメリカ(米国プロゴルファー協会)です。ここが大会の性格を決めている部分です。

混同されやすいのですが、この団体はツアーを運営する組織とは別です。米国のトーナメントを運営しているのはPGAツアーという組織で、PGA・オブ・アメリカはゴルフ指導者やクラブ運営に携わるプロフェッショナルの団体です。レッスンプロ、ショップの責任者、コース運営の担当者などが所属しています。

つまり全米プロは、ツアー選手の団体ではなく、ゴルフを仕事にしている人全体の団体が主催する大会ということになります。この成り立ちが、後述する出場枠の設計に直結しています。

開催時期は2019年に5月へ移った

開催時期については、押さえておくべき変更があります。

かつては8月中旬に開かれていました。レイバーデーの週末前にあたる時期で、4つのメジャーの最後に位置していました。しかし2019年から5月に移り、メモリアルデーの週末前に開催される形になっています。

この変更で、メジャーの並びが変わりました。

順 大会 時期
1 マスターズ 4月
2 全米プロ 5月
3 全米オープン 6月
4 全英オープン 7月

現在は4月から7月までの4か月に、毎月ひとつメジャーが入る構成です。以前は8月まで間隔が開いていたため、シーズンの密度が大きく変わりました。

古い資料や記事を読むときには注意が必要です。8月開催と書かれていれば2018年以前の情報ということになります。年最初のメジャーについてはマスターズとはで扱っています。

Golf clubhouse exterior with flags on a bright day, photorealistic, no text

ワナメーカートロフィー

この大会の優勝者に渡されるのがワナメーカートロフィーです。

大きさが特徴です。高さは2.5フィート近く(約75センチ)、重さは27ポンド(約12キロ)あります。優勝者が両手で抱えて持ち上げる姿が映るのは、片手では扱えない大きさだからです。

名前の由来は、創設に関わったロッドマン・ワナメーカーです。この人物が寄贈したトロフィーが、そのまま大会の象徴になっています。

マスターズのグリーンジャケット、全英オープンのクラレットジャグと並んで、メジャーの優勝者が受け取るものには、それぞれ固有の形があります。トロフィーを見れば何の大会か分かるという点も、メジャーが積み上げてきた蓄積のひとつです。

クラブプロに20枠が確保されている

この大会の最も独特な点がここです。出場する156名のうち、20枠がクラブプロフェッショナルに確保されています。

クラブプロとは、ツアーを転戦する選手ではなく、ゴルフ場や練習場で働いているプロのことです。レッスンをしたり、ショップを運営したり、コースの業務に携わっている人たちです。

つまり普段は人に教えている立場のプロが、世界のトップ選手と同じ組で回るということが毎年起きています。他の3つのメジャーには、こういう枠組みはありません。

これはPGA・オブ・アメリカという主催団体の性格から出てきたものです。指導者やクラブ運営者の団体が主催しているのだから、その会員に出場の機会があるのは一貫しています。

枠は与えられるのではなく、クラブプロ同士の選手権を勝ち抜いて得るものです。狭い門ではありますが、ツアー選手でなくてもメジャーに出る道があるという点で、ゴルフを仕事にしている人にとって意味を持つ仕組みです。

レッスンプロという職業についてはゴルフレッスンの選び方で扱っています。自分が教わっている相手がどういう立場なのかを知る手がかりにもなります。

マッチプレーからストロークプレーへ

もうひとつ歴史的な変更があります。この大会は長くマッチプレー方式で行われていましたが、1958年からストロークプレーに変わりました。

マッチプレーは1対1で各ホールの勝敗を競う方式で、ストロークプレーは総打数を競う方式です。現在のプロトーナメントはほぼストロークプレーですが、全米プロは当初マッチプレーだったということになります。

方式が変わると大会の性格も変わります。マッチプレーでは対戦相手との駆け引きが中心になりますが、ストロークプレーではコース全体と向き合うことになります。古い記録を見るときには、どちらの方式の時代かを意識しておくと見え方が変わります。

ルール上の方式の違いについてはゴルフルール基本ガイドで基本的な考え方を整理しています。

優勝者が得る出場権

優勝者が得る資格は、他のメジャーと似た構成です。

  • 他の3つのメジャーとプレイヤーズ選手権に5年間自動招待
  • PGAツアーで5年間の出場資格

メジャー優勝が選手のキャリアを変えるのは、こうした資格の確保が大きいからです。出場できる大会が決まれば、数年先まで計画を立てられます。

「地味なメジャー」と言われる理由

4つのメジャーを比べると、全米プロは話題になりにくい大会です。これには構造的な理由があります。

ひとつは固有の舞台を持たないことです。マスターズにはオーガスタ・ナショナルがあり、全英オープンにはリンクスという明確な土地の性格があります。全米オープンは難しさそのものが看板になっています。対して全米プロは、コースも持ち回りで、セッティングも極端ではありません。語るときの軸が土地や難易度に置けないため、印象が残りにくくなります。

もうひとつは時期の問題です。かつて8月に開かれていた時代は、4つの最後という位置でした。ところがその頃にはすでにシーズンの関心が別のところに移っており、年間の締めくくりとしては扱われにくい状況がありました。5月への移動には、この位置づけを変える意図もあったと考えられます。

ただし、これは大会の価値が低いという話ではありません。メジャーとしての重みは4つとも同じで、優勝者が得る資格もほぼ揃っています。派手な物語を持たないという意味で地味なだけで、勝つことの難しさに差はありません。

見方を変えると、この大会は純粋に実力が出やすいとも言えます。極端なセッティングで運の要素が入り込むこともなく、固定コースでの経験値が有利に働くこともありません。条件が平準化されている場で誰が勝つのかを見る大会、という受け取り方ができます。

4つを並べて追うようになると、この違いが面白く見えてきます。物語のある大会と、物語を持たない大会。どちらもメジャーであるという事実が、1年を通した見方に幅を出してくれます。

観戦するときの見どころ

5月開催になったことで、コースの状態と気候が以前と変わりました。真夏の8月に比べれば、芝も選手の体力条件も違ってきます。

見どころとして挙げられるのは、クラブプロの戦いぶりです。予選を通過するクラブプロが出る年もあり、そのときは話題になります。普段は教える側にいる人が、世界の上位選手と同じ条件で戦うという構図は、この大会にしかないものです。

もうひとつはセッティングの性格です。全米オープンのように極端にスコアを抑え込む設計ではないため、伸ばす選手が出てきます。難しさの質が違うという点に注目すると、大会ごとの違いが見えてきます。全米オープンとはで、そちらのセッティングの考え方を扱っています。

国内のトーナメント開催コースを自分で回ってみると、中継の判断の意味が分かるようになります。当サイトでは芥屋ゴルフ倶楽部、六甲国際ゴルフ倶楽部、福岡雷山ゴルフ倶楽部を扱っています。

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全米プロゴルフ選手権のQ&A

Q. いつ始まった大会ですか?

A. 1916年10月に、シワノイ・カントリークラブで第1回が開かれました。4大メジャーでは最も新しい大会です。

Q. 主催はどこですか?

A. PGA・オブ・アメリカ(米国プロゴルファー協会)です。ツアーを運営するPGAツアーとは別の団体で、指導者やクラブ運営に携わるプロの団体です。

Q. 開催時期はいつですか?

A. 5月です。メモリアルデーの週末前に開かれます。2018年以前は8月中旬の開催でした。

Q. ワナメーカートロフィーとは何ですか?

A. 優勝者に渡されるトロフィーです。高さ約75センチ、重さ約12キロあります。寄贈したロッドマン・ワナメーカーの名が付いています。

Q. クラブプロの枠とは何ですか?

A. 出場156名のうち20枠が、ゴルフ場や練習場で働くプロに確保されています。クラブプロ同士の選手権を勝ち抜いて出場します。

Q. 昔はマッチプレーだったのですか?

A. はい。1958年からストロークプレーに変わりました。

Q. 優勝すると何が得られますか?

A. 他3メジャーとプレイヤーズ選手権への5年間の自動招待、PGAツアーでの5年間の出場資格などです。

まとめ

  • 全米プロゴルフ選手権は1916年創設。4大メジャーでは最も新しい
  • 主催はPGA・オブ・アメリカで、ツアー運営団体とは別の組織
  • 2019年から開催時期が8月中旬から5月に移った
  • 優勝者にはワナメーカートロフィー(高さ約75センチ・重さ約12キロ)が渡される
  • 出場156名のうち20枠がクラブプロに確保されている
  • 1958年にマッチプレーからストロークプレーへ変更された
  • 優勝者は他3メジャーとプレイヤーズ選手権に5年間自動招待される

4つのメジャーのなかで目立ちにくい大会ですが、ゴルフを仕事にしている人全体の団体が主催しているという成り立ちを知ると見え方が変わります。

クラブプロの20枠は、その思想が形になった部分です。中継でその名前が出てきたら、普段は誰かに教えている人だということを思い出してみてください。